押し紙の割合推定
新聞は本当に4500万部も発行されているのか?
公表販売部数と実際の販売部数に差があることに、いろんな問題が指摘されている。新聞社は否定する押し紙率は3〜4割程度と言われているが定かではない。面白そうなので、入手可能なデータから押し紙の比率を推定してみた。
アマゾンで朝日新聞の押し紙を売っていた!(花田紀凱) - 個人 - Yahoo!ニュース
(*;末尾に参考リンク記載)
押し紙*1)の定義
狭義の押し紙とは、「(販売予定以上を)販売店に対し新聞社が新聞の購入を強制すること」で法律により禁止されている。しかし、販売店側にメリットもあることから、販売店は強制されなくとも販売予定以上の部数を新聞社から購入しており、その部数が販売部数として公表されている。新聞社の収入の柱である広告費は、販売部数をベースに計算されている。さらに、読者に届くことのない必要以上の印刷は資源の浪費であり環境問題でもある。よって公表販売部数が実際の販売部数より大きく乖離することは例え強制性がなくとも大きな問題がある。
押し紙の定義は人により様々だが、ここでは
「押し紙部数 =公表販売部数(ABC部数) - 実際に販売された部数」
とした。
販売部数の定義(毎日新聞)
「新聞社が販売店や即売の業者に原価を請求した部数、あるいは郵送予約購読者にその購読料を請求した部数。」
販売部数4,500万部*2)は直感的には多すぎる
発行部数世界1位は読売新聞、2位は朝日新聞*9)であり、成人人口1000人あたりの部数は425部*2)と日本が世界でもっとも高くなっている。4,500万部という発行部数をもとに単純計算された1世帯あたり0.83部(2000年は1.13部)*2)という数字は、ほとんどの家庭に新聞があるということであり、併読や企業の購読を考えても大きすぎる数字ではなかろうかと直感的には感じる?
購読率調査結果
第七回メディアに関する世論調査結果では約78%*4)が新聞を月ぎめで購読しているとの回答であった。無作為抽出で大規模に調査されておりこの数字が正しいように思えるが、他の調査結果*5)と明らかに数字の隔たりがあるように感じられる。
従来型調査の偏り
第七回メディアに関する世論調査は全国5000人を対象に住民基本台帳から無作為抽出・訪問留め置き法にて行われている。回収率は65.4%で、回答者の年代構成をみてみると国勢調査結果と比較する20、30台の割合が低く一律な回答ではないことが読み取れる。*4)また調査の偏りに関するレポート*7)によると、訪問留め置き調査法は「配偶者あり、一戸建て、高収入、専門職」の割合が高く、購読者割合が実際よりかなり高い方にふれてしまっていることが想定される。
販売部数を推定してみる
いろいろなデータがあったが確かそうな国勢調査結果*3)と毎日新聞広告局*6)のデータを用い推定した。単独・夫婦以外の世帯をその他とまとめた。明らかに単独世帯は購読率が低い。毎日新聞閲読者プロフィールにあるように20代世帯主が1.4%と大変低く20代読者の多くは親と同居しているものと推定される。
世帯数(単位:万世帯)とその割合(2010国勢調査)
単独 | 夫婦 | その他 | 合計 | |
世帯数 | 1781 | 1087 | 2623 | 5184 |
割合(%) | 32.4 | 19.8 | 47.7 | 100 |
新聞購読世帯の構成(毎日新聞広告局)
単独(+不明) | 夫婦 | その他 | 合計 | |
割合(%) | 8.6 | 15.7 | 75.7 | 100 |
購読世帯数をもとに販売部数を推定してみる。ここから先はデータが不足しているためいくつかの数字を仮定し推定してみる。販売部数の95%が戸別宅配*2)であり、戸別宅配の内訳は一般家庭と事業所になる。一般家庭の10%が併読*6)しているとのデータもあるので、「実際の販売部数は購読世帯 の 1.3倍」と仮定し計算することとした。
購読世帯の中で一番購読率が高くボリュームの大きい「その他世帯」の購読率を70から100%まで10%刻みで仮定した結果が下の表となる。
主婦(20~40代)対象に仮定の新聞購読率のアンケートをとった結果、新聞定期購読率は48.6%*5)であった。対象となる世帯の区分としては「夫婦+その他」世帯になり、この世帯の20〜40代の購読率は50%程度ということを意味する。高年齢世代を加えると10〜20%上昇すると考えられるので「その他世帯の購読率70〜80%」が妥当な数字になると思われる。その場合の押し紙の割合はやはり30〜40%となった。
購読世帯数(単位:万世帯) | 購読率(%) | ||||||||||||
単独(+不明) | 夫婦 | その他 | 合計 | 単独(+不明) | 夫婦 | その他 | 夫婦+その他 | 全体 | 推定販売部数(万部) | 押紙率(%) | |||
298 | 544 | 2623 | 3466 | 16.7 | 50.1 | 100 | 85.4 | 66.8 | 4332 | 12 | |||
268 | 490 | 2361 | 3119 | 15.1 | 45.1 | 90 | 76.8 | 60.2 | 3899 | 21 | |||
238 | 435 | 2099 | 2772 | 13.4 | 40.1 | 80 | 68.3 | 53.5 | 3466 | 30 | |||
209 | 381 | 1836 | 2426 | 11.7 | 35.0 | 70 | 59.8 | 46.8 | 3032 | 39 |
ここでは国勢調査と毎日新聞のデータを元に推定した。この解き方が正解ではないと思うし、他にもいろんな解き方があると思うので、いろんなデータを元にこの問題を解いてみたら面白いのではと思う。
以下参考情報元
1) 三橋貴明オフィシャルブログ
・再販制度と新聞特殊指定
再販制度と新聞特殊指定|三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba
2) 日本新聞協会
・新聞発行部数は1日あたり4,500万部
・成人人口1000人あたり425部
・1世帯当たり部数(発行部数/世帯数)は0.83部
・95%が宅配
各国別日刊紙の発行部数、発行紙数、成人人口1000人当たり部数|調査データ|日本新聞協会
3) 総務省統計局
・国勢調査-5194万世帯、単独世帯は32.4%
4) 第7回メディアに関する世論調査
・全体の78%が月ぎめで新聞を購読
http://www.chosakai.gr.jp/notification/pdf/report7.pdf
5)
・月ぎめ一般紙の投函率は、ファミリー賃貸物件は20から40%。分譲マンション40~50%前後、ワンルームでは5%以下。ちなみに戸建てだと60%以上か。
「Shufoo!」主婦のスマートフォン利用についての調査結果
主婦のスマホ利用率が1年で48.7%から66.3%へ増加、新聞の定期購読率は5割を切る -INTERNET Watch
6) 毎日新聞社広告局
7) インターネットモニター調査はどのように偏っているのか
・従来型調査は配偶者あり、年収、一戸建てなどが高め
http://www.works-i.com/pdf/s_000001.pdf
8) 平成24年経済センサス‐活動調査
・全国の事業所数は576万カ所、従業員数5583万人
9) 世界新聞発行部数ランキング
1%の富裕層が世界の富の50%を保有 - DuKiccoの雑記
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